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幸延湯豆腐

前回に引き続いては、西の長谷川幸延が語る湯豆腐――。
       ☆
 冬、安上がりで、しかも最高に旨いものが二つある。
 船場煮
(せんばに)と湯豆腐である。船場煮は、大阪だけのものなので、ここには略して、さて湯豆腐である。これも私は、関西のものだと信じている。豆腐そのものが、別項の「豆」にもいった通り、京の嵯峨豆腐をはじめ、関東の比ではない。ことに湯豆腐である。
 昔から、京の南禅寺大阪の高津
(こうづ)の湯豆腐。といえば、東京にも根岸の笹乃雪と声がかかろうが、ここは湯豆腐よりも豆腐料理である。
 もっとも、高津の湯豆腐は、今はもうない。実利主義の大阪では、湯豆腐だけでは商売になるまい。だから湯豆腐は、家庭で食べるべきである。
 湯豆腐には見た目に美しい絹こしでやるのと、野趣横溢
(おういつ)もめんとがある。絹こしの場合は、やや大きくサイの目に切り、もめんはちぎって抛りこむ。絹こしは、鍋のまん中に醤油を入れたのぞき(湯呑型)をすえ、ネギ、削り鰹、好みの薬味を入れ、煮上がった絹こしにそれをつけて食べる。もめんは豆腐だけを煮立てて、小皿にとって醤油、薬味のほかに大根おろしをそえるのがよい。ここらが食べものの面白いところで、絹こしに大根おろしは合わないし、大根おろしは煮(た)いては食べられない。絹こしの方はしゃれた鍋や、樽源のセットで食べるにいいが、もめんは土鍋にかぎる。昆布は早目に引き上げ、両方とも金杓子(かねしゃくし)など用いないで、ぜひとも散り蓮華(れんげ)ですくってほしい。
 とにかく、味は簡素にきわまる――というが、湯豆腐などはその代表的なものだ。が、肝腎の豆腐が、東京では、最近まで必ず「四角い豆腐」といって注文しないと、まるい豆腐が、食膳に上った。今思い出してもゾッとする。
 白いソーセージの親方みたいなヤツである。
 何しろ、まるい冷や奴など、平気で食べる東京人なのだからネ。


参考文献:池田弥三郎×長谷川幸延『味にしひがし』(土屋書店)
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テーマ : ご当地グルメ
ジャンル : グルメ

tag : 豆腐

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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