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入鹿の血

『妹背山婦女庭訓』四段目)では、“豆腐の御用”だけでなく、
井戸替の段から、「ヤイ子太郎 (ねたろう)、酌をしをらぬか。
どりや吸物に豆腐でも焚
(た)いて来ましよ 」と、頻繁に
豆腐が顔を出す印象があるのですけれども、豆腐の吸い物とは
湯豆腐のことかしら。豆腐はさて置き、本題に戻りますと――。
牝鹿の生き血によって生まれた蘇我入鹿は、藤原淡海の放つ
矢を苦も無く素手でつかむ程の魔人でありますが、出生の秘密
故の弱点も有しており、ボス・キャラを倒す必須アイテムとされ。
       ☆
彼奴(きゃつ)が心をとらかすには、爪黒の鹿の血汐(ちしお)疑着(ぎちゃく)の相ある女の生血、これを混じてこの笛に灌ぎかけて調ぶる時は、実に秋鹿の妻恋ふ如く、自然と鹿の性質顕はれ、色音を感じて正体なし。
       ☆
(猟が禁じられている)爪黒の牝鹿については、既に鹿殺しの段
(二段目)において、猟師芝六(実は玄上太郎利綱)が入手済み。
疑着(=深い嫉妬や疑念)に囚われた女として、お三輪も鱶七に
刺し殺される次第ですが、このメカニズムがどうにも吞み込めず…
…入鹿には白い牝鹿の血が流れている ⇒ 爪黒の牝鹿の血汐で
牝鹿の血を呼び覚ます ⇒ さらに、疑着の相の女の生き血により、
恋に狂った秋鹿のトランス状態にまで陥らせる……という仕組み
でしょうか。ならば、爪黒の秋鹿を仕留めればよいように思う訳です
が、入鹿にしても人間の女から生まれた以上、人の生き血は必須
となるのか(いずれにせよ、お三輪が不憫なことには変わりなくて)。
正直、その笛によっても、入鹿は一瞬正気を失うだけ。藤原鎌足
によって掻き切られた生首にしろ、宙を舞い、火炎を吐きかける
無双ぶり。首塚はあちらこちらに残されているし、入鹿は凄いよ!

参考文献:『文楽床本集 国立文楽劇場 令和5年7・8月』(独立行政法人日本芸術文化振興会)
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テーマ : 伝統芸能
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 文楽豆腐史跡

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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