池井戸潤を読む

開催。前回まで古典が2作、続いていた。
※第2回・課題作品は夏目漱石「夢十夜」
今回べたでよいから、今時の作品にしよう!
課題作品は池井戸潤から選ぶことにして、
『空飛ぶタイヤ』(実業之日本社文庫)。
一作だけで、その作家をとやかく言えない。
代表作らしき物、計6作を一気読みしてみた。
いずれも広義のミステリー作品で面白かった。
☆
1988年、『果つる底なき』、第44回江戸川乱歩賞受賞。
2010年、『鉄の骨』、第31回吉川英治文学新人賞受賞。
2011年、『下町ロケット』、第145回直木三十五賞受賞。
ちなみに、現時点で上記3賞を受賞した作家は、池井戸の他、高橋克彦のみ。
『空飛ぶタイヤ』は、2006年の刊行。
乱歩賞受賞後、雌伏の時期に放たれた原稿用紙1,200枚超の長編である。
☆
第28回吉川英治文学新人賞、第136回直木三十五賞候補作にもなった。
受賞こそ逸しているのだが、後の両賞獲得を見ればわかるように、
既にチェックメイト済みだった、とも言える。
旧・三菱銀行に入行経験のある履歴から、“経済小説”の意匠をまとい、
役割の軽重こそあれ、作中には必ずや銀行マンが登場する。
☆
しかし、「広義のミステリー」と表現せざるを得ないほど、
ガチガチの本格ミステリー(=フーダニット)からは程遠い作風ではあった。
『果つる底なき』など、謎解きを主眼として読むには、どうにも詰めが甘い。
そのもやもや感は、作者本人も自覚していたようで、やがて
「生きている人」を描く方向に舵を切る。
『空飛ぶタイヤ』では「人間を描くんだ」と意識を切り替えていたようだ。
同作の直木賞落選の理由は「文学性に乏しい」だったというが……。
参考文献:池井戸潤『果つる底なき』(講談社文庫)
池井戸潤『空飛ぶタイヤ』(実業之日本社文庫)
池井戸潤『鉄の骨』(講談社文庫)
池井戸潤『下町ロケット』(小学館文庫)
- 関連記事
-
- ひよこのピッピ (2016/03/24)
- まりあ (2016/03/23)
- 池井戸潤を読む (2016/03/22)
- 掘返べら (2016/03/21)
- ECCE HOMO (2016/03/20)
スポンサーサイト