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島豆腐の製造基準(適用外)

戦後、米国の統治下にあった沖縄が日本に返還されたのは、昭和47(1972)年5月15日。この日の午前0時をもって、日本国憲法をはじめとする日本の法令が沖縄にも適用されることになった。沖縄といえば「島豆腐」。堅くて、大きくて、アチコーコー(熱々)で食べるのが流儀だが、その島豆腐にも日本の法律が適用されることになった。

豆腐には製造基準が定められており(2007年7月「豆腐の製造基準」参照)、「食品衛生法」に基づく「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年12月28日厚生省告示第370号)で「原料用大豆は、品質が良好で夾雑物を含まないものでなければならない」などの8項目が挙げられているが、島豆腐においては「豆腐の水さらしは、絶えず換水をしながら行わなければならない」と「豆腐を製造する場合に使用する水は、飲用適の水でなければならない」の2項目が問題だった。出来たてをアチコーコーで食するのが島豆腐なのに、水に浸したら冷たくなる。

保健所から「規則・基準を守れ」との指導を受けて、新たな資本導入を余儀なくされたために廃業した豆腐製造業者も多かったという。だが、沖縄人にとって島豆腐は長年親しんできた伝統食品。島豆腐の製造・保存方法が国の定める基準に抵触していたのは事実だったが、零細で家内工業的な島豆腐の製造業者の辛抱と、身近に親しんだアチコーコーの豆腐を買い支えた消費者のこだわりが島豆腐を生き長らえさせた。当時の沖縄県豆腐油揚商工組合なども、関係省庁に島豆腐の存続の要請を続けた。

その結果、沖縄が日本に返還されて2年後、「食品衛生法施行規則」の一部が改正された。「『成型した後水さらしをしないで直ちに販売の用に供されることが通常である豆腐』とは、沖縄県等の一部地域に慣習として定着している特殊な製造、販売方法による豆腐を指すものであるが、これらの地域においても漸次、冷蔵するか又は飲用的の冷水で絶えず換水しながら保存する方法に指導されたいこと」とし、要するに将来的にはともかく、島豆腐の製造・保存方法については旧厚生省が「食品衛生法」の適用外としたのである。

また、一部改正において「沖縄県“等”」とあるのは、沖縄だけでなく、石川県の白峰や九州各地に点在する「特殊な」豆腐についても、その特別な製造法、保存法が容認されたためである。

参考文献:宮里千里『シマ豆腐紀行』(ボーダーインク)
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