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粘度と糸引き度

煮た大豆に納豆菌が繁殖するとき、納豆特有の粘性物質、いわゆる“糸”が作られる。納豆の糸はきめが細かく、切れずに6mも糸を引いたという実験報告があるそうだ。糸引きは納豆の品質を左右する重要なもので、納豆メーカーでは粘度と糸引きを絶えずチェックしている。

粘度は粘度計という特殊な計測器で計る。粘度の単位はポアズPoise)といい、g/cm.secで表す。実用上は、その100分の1の1センチポアズ(cP)や1,000分の1の1ミリポアズ(mP)が使われる場合が多い。ポアズは、フランスの粘性流体の研究者ポアズイユ(J. L. Poiseuille、1799〜1869年)の名にちなむ粘性率のCGS単位(長さにセンチメートル、質量にグラム、時間に秒が基本単)。

1ポアズ(P)は、流体内で1センチメートルにつき1cm/sの速度勾配がある時、速度勾配の方向に垂直な面において速度方向に1平方センチメートルにつき1ダイン(dyn)の大きさの応力が生ずる粘度とされている。1dynは、質量1グラムの物体に働いて、毎秒1センチメートルの加速度を生じさせる力の大きさ。20℃の水の粘度が1cP。

また糸引き度(thread horming property)は引き上げる速度とも関係し、糸を引くには適切な速度がある。あまりにゆっくり引き上げると流れ落ちてしまい、糸状に伸びない。反対に急激に引き上げると、固体のように切れてしまう。この境界の時間が「粘弾性体の緩和時間」と呼ばれ、納豆製造の管理では重要視されている。

納豆の糸は、大豆のアミノ酸中、最も多量に存在するグルタミン酸がポリペプチド(アミノ酸が数個以上結合した集合体)と結合し、これとフラクトース重合体(フラクタン)が結合した含窒素多糖類である。その含窒素多糖類が、納豆の中には乾物換算で2%もある。弱アルカリ性(pH7.2〜7.4)の範囲で安定しているため、このpH域では十分に糸を引くが、そのpHを超えると粘性が低下してしまい、糸引きの状態も悪くなる。

参考文献:小泉武夫『納豆の快楽』(講談社文庫)
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