大原美術館

「大原美術館」を観に行きたかったのです。
昨夏、“星空案内人”資格認定講座の
受講のために、毎週末のように、倉敷通い。
それなのに、大原美術館へ行けずじまいで、
悔やまれていたので。新大阪を10時59分発。
正午過ぎには、倉敷入りしていました。
JRで購入した「岡山・倉敷ぐるりんパス」は、
大原美術館の入場券などもセットになった
優れもの(1万2,700円)でした……。
そこで、ひとつの誤算。通常の美術展などを見物に行く感覚でしたから、
ぼくは2時間もあれば、大原美術館も大方、観て回れるだろうと楽観し、
ゆっくり、昼呑みなどを楽しんだため、14時半頃の入館となったのです。
ロダンの「カレーの市民」と「洗礼者ヨハネ」に出迎えられるのですが、
同館は本館だけでなく、分館、工芸・東洋館も設けられ、さらには同じく
倉敷美観地区内とはいえ、ぼちぼち歩いた所に、児島虎次郎記念館
(=オリエント室)も建っているのです。その有数のコレクションを眺めていれば、
本館だけでも、あっと言う間。16時半に閉館のお知らせを聞かされていました。
小島虎次郎記念館まで移動するどころか、

工芸館・東洋館も駆け足で回る体たらく。
しかし、大原孫三郎の命を受けて、画家・
児島虎次郎が収集を始め、その遺志を継いだ
孫三郎の長男、大原總一郎の拡充になる
西洋近代絵画のコレクションは、かなりの
目利きによるもので、ここにあれがあるのか!
と、唸らされることしきりです。ピン・ポイントで
一流派、一画家の要諦をつかめるような、
絶妙な作品を押さえてあるのですもの。
エル・グレコの「受胎告知」は別格としても、超有名どころを挙げるだけで、
ゴーギャン「かぐわしき大地」、モネ「積みわら」「睡蓮」、モロー「雅歌」
……ぼくの大好きなブラックの「裸婦」やピカソ「頭蓋骨のある静物」、
ミロの「夜のなかの女たち」もキュートで素敵。非常に贅沢な布陣です。
近代日本洋画では、古賀春江の「深海の情景」を生で鑑賞できたのが収穫。
小島虎次郎館も含めれば、丸一日あっても足りないのではないでしょうか。
それほどに見応えがあります。また、単に収蔵コレクションだけでなく、
昭和5年(1930)に開館した本館、あるいは床張りなどにも趣向を凝らした
工芸館といった建築物自体も、非常に魅力に富んでいるところが、何とも。
児島虎次郎と大原孫三郎(現「クラボウ」第2代社長)は、最初、
画家とパトロン――といったありがちな図式で見ていたのですが、
ほぼ同年齢(孫三郎は1880年生、児島は1881年生)だったということに驚き、
岡山県という同郷出身の友人同士であったことを知るにつけて、
実業と芸術の理想的(?)な関係に、羨望の念を覚えてしまいます。
さらに、次世代の總一郎の信念「美術館は生きて成長してゆくもの」にも
しみじみ考えさせられて、倉敷市民は幸せ者だなあ、と詠嘆するのでした。
参考文献:藤田慎一郎・編『大原美術館』(日本文教出版)
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