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棟方ノオト

棟方志功(1903~1975)には、独特の語法がある。
彼独自の思い入れを込め、棟方語のようなものが造られている。
例えば、「版画」ではなく、「板画」――。
板画というものは板が生まれた性質を大事にあつかわなければならない、
木の魂というものをじかに生み出さなければダメだと思いましてね

(『花深処無行跡』)
       ☆
また、「大世界の柵」や「恐山の柵」など、作品名に多々見受けられる“”――。
わたくしの『柵』はそういう意味(垣根の柵、区切る柵)ではありません。
字は同じですが、四国の巡礼の方々が寺々を廻られるとき、首に下げる、
寺々へ納める廻札、あの意味なのです。この札は一ツ一ツ、自分の願いと、
信念をその寺に納めていくという意味で下げるものですが、わたくしの願所に
一ツ一ツ願かけの印札を納めていくということ、それがこの柵の本心なのです。
ですから納札、柵を打つ、そういう意味にしたいのです
」(『板極道』)
       ☆
ちょっと、待て。「柵」以前に、霊場巡りに関心が無い人々には「廻札」って何?と。
お遍路さんらが「廻(まわ)り札(ふだ)」、「印札(しるしふだ)」、「納め札」と呼ぶようですが、
昔は札所で木柱を立てたり、木製や銅製の納め札を打ち付けたりしていたため、
札を打つ」という表現が定着した模様。いや、納め札と同じ意味にしたいという
棟方の気持ちは受け止めたにしても、「版画」でなく「板画」の字面を採ったような
明快さに欠ける説明に思えてなりません。ならば、「」の字を題に使えば?と
考えてしまう訳で、札の連なった大部の物が柵というイメージだったのでしょうか? 
棟方の板画は薄っぺらな木っ端でなく、木の魂から成る大いなる願だという気宇か。

参考文献:棟方志功『板極道』(中公文庫)
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 美術

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「柵」の字をボールドにすると、潰れて読めない……。
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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
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