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本の中の本

“本の中の本”が好きです。
入れ子構造だの、メタ・フィクションだの、劇中劇だの、
自己言及をめぐるポスト・モダン的な仕掛けをどうこう言うのではなく、
ボルヘスやら、イタロ・カルヴィーノやら、高橋源一郎やら、大好物ですけれど)
単純に、本の中に本が登場してくると、楽しくなるのです。
シンプルな例だと、『トム・ソーヤーの冒険』における綴り方の授業で
主人公とは別の子らの作文が引用されているだけでも、愉快な気分。
(小説を読むという行為は、畢竟、他者の言葉を聴くということなのかもしれません)
本の中の本が、現実に存在する書物か、架空の書物かは問いませんが、
今回は、リアルな本の中のリアルな本の話です。
昨年末頃から、有栖川有栖を集中的に固め読みしており、
学生アリス・シリーズ(江神二郎シリーズ)第3作、『双頭の悪魔』のページを
繰っていると、現在なお生きている作家中、ぼくの最も敬愛する文学者、
高橋源一郎先生の御名を見出して、感激に打ち震えてしまいました。
学生アリス・シリーズのヒロイン役(?)を務める有馬麻里亜の読む本が
高橋源一郎のデビュー作『さようなら、ギャングたち』(1981)なのでした。
残念なことか、幸いなことだったのか、麻里亜は読後感を一切述べておりません。
(クローズド・サークルの中で殺人事件に巻き込まれている状況下、
謎解きに絡むこともない文学作品の感想を語るのも変な話なので、当然でしょうが)

 ※ちなみに、『ギャング』を含む初期3作をベースにした山川直人・監督の
 商業映画デビュー作『ビリィ★ザ★キッドの新しい夜明け』(1986)も傑作です。
 映画では、「さようなら」が「さよなら」と表記されていたような記憶があり、
 はっきり思い出せないので、機会があれば、確認しておこうと思います。
 主演は三上博史。高橋源一郎本人が脚本を手掛け、出演も果たしていますよ。

さて、有栖川作品の中に、現実に流通している高橋先生の作品が現れる、
思わぬところで大好きな作家の作品名に触れる……この悦びは何なのでしょう? 
読書という(ある種)現実逃避のような行為においても、
地続きの現実を再認識できるからか? 背徳感を和らげてくれるせいなのか? 
逆にもしかすると、この世界にせよ、(一冊の、あるいは複数の)書物の中に在る
ひとつの世界に過ぎないという慰めを得られるためなのでしょうか? 

参考文献:有栖川有栖『双頭の悪魔』(創元推理文庫)
       高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』(講談社文芸文庫)
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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

tag : 小説映画

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
フードビジネス・コンサルタント
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