クリーピー

黒沢清・監督の『クリーピー 偽りの隣人』(2016)をVODで観ました。
前川裕の第15回「日本ミステリー文学大賞」新人賞受賞作を基にしている
ようですが、未読です。映画と小説は別物と考えているので、
機会があれば、手に取って読むこともあるでしょう。(原作からして、おそらく)
実際にあった北九州監禁殺人事件を彷彿とさせる設定となっており、
家族間を仲違いさせ、殺し合いに至らせるという胸糞悪い展開を踏襲。
そうなると、自らの手は決して汚さない犯人の描き方、演じ方が鍵となる訳で、
報道規制も行われた残虐非道な手口を、香川照之がねちっこく巧演。
被害者を使って他の被害者を虐待するが、自分では他者を傷付けられない
というキャラクター設定は絶妙の匙加減でした(ラストでも効果的に活かされます)。
香川は「西野」と呼ばれていますが、途中で、西野ですらなかったことが明らかに。
家族間の微妙な綻びにつけ込み、内部に侵食してゆく様は、不気味でしたが、
マインド・コントロールの手段に薬物(覚醒剤?)を用いていたのは安易か、と。
確かに手っ取り早くはあるんですけどねえ……黒沢監督の“洗脳”テーマでは、
『CURE』(1997)という傑作があり、ハードルも自然と上がってしまうのかなあ。
現実の連続殺人事件を基に、家族の解体を描いた映画として見ると、
埼玉愛犬家連続殺人事件を下敷きにした園子温・監督の
『冷たい熱帯魚』(2010)ほどの陰惨な衝撃も無くて、小綺麗な印象。
香川が役者と売れ過ぎているために、「香川照之」にしか見えないハンデか? 
それを言うと、主人公・高倉の妻、康子を演じた竹内結子だって
非の打ち所の無い整然とした演技なのですが、単に説明的な“狂気”のようで、
物足りなく感じてしまいますが、R指定を避けようとしたのであれば、仕方無いか。
問題は元・刑事の犯罪心理学者、高倉で、きちんと西野(仮)に対置させるべき。
善悪二元論でなく、ティム・バートン『バットマン』(1989)以降、
メジャー映画でも顕在化するようになったサイコパスVSサイコパスの構図で。
高倉の同僚・野上をはじめ、警察の胡乱な対応が失笑の対象でしかないのは
当然です。この社会に信頼に足るべき正義も、倫理も見当たらないのだから。
過去の一家失踪事件の謎を追う高倉が、捜査自体に耽溺し、内心で「興味深い」
「面白い」と感じていることを知った生き残りの被害者・早紀(=川口春奈)から、
「あなた、それでも人間ですか」「おかしい」と罵倒されるのが、完全なネタばれ。
西野(仮)の狂気に、高倉の狂気が対峙するという構図を透かし見せつつも、
高倉役の西島秀俊の佇まいが真面目な好青年でしかなくて、誤解を招くよねえ
と感じてしまうのでした。高倉も西野(仮)と同じ穴の狢(むじな)なのですが。
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Author:ぽか
通りすがりの夢想家。元(にして最後の)「トーヨー新報」編集人。現在は、一介の編集素浪人?



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「トーヨー新報」は、昭和33年(1958)創刊。大豆加工品(豆腐・油揚げ、納豆、豆乳、湯葉、凍り豆腐、もやし等)、こんにゃく、総菜業界をメイン購読者層に、月3回の旬刊紙「トーヨー新報」や業界関連データブック『豆腐年鑑』を発行。平成25年(2013)12月21日号、第1851号をもって終刊に至る。

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