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酸素不足がもたらす大豆の発芽不良

水田転換畑は畑地に比べて地水位が高く排水性で劣るため、土壌が過湿となりやすい。特に、転換畑で小麦や大麦を収穫した後に大豆を栽培すると、播種が6月初・中旬〜7月上・中旬の梅雨期に当たるため、土壌が過湿になる危険性はかなり高くなる。土壌の過湿によって大豆は出芽不良になりやすく、これが低収量の大きな原因であるという意見は多い。また九州では、大豆の播種が降雨の極めて多い梅雨末期から梅雨明け直後に当たるため、大雨によって発芽や苗立ち不良になることが多く、それが収量の不安定性につながるといわれている。

土壌の生産性を左右する要素として、水と養分が挙げられるが、土壌中の酸素も時によってはそれら以上に重要となる。土壌の水と養分が数日単位で変動することはまずないが、水分が過剰(過湿)になると土壌中の酸素濃度は短期間に激減する。土壌水分が過剰になると、土壌中の物質や化学的性質に様々な変化が生じるが、最も急速に変化するのが酸素濃度である。播種後の降雨や湛水によって過湿土壌になると、急速な吸水で起こる種子の障害と種子周辺の酸素不足が大豆の出芽不良をもたらす。

大豆は本当に発芽期間の酸素不足に弱い作物なのかどうか。エンドウ、ラッカセイ、トウモロコシ、小麦、稲、ゴマ、綿の7種類の作物とともに、酸素濃度20%と5%の条件下で発芽率の変化を見た試験結果では、低酸素条件が発芽率に及ぼす影響は作物によって明らかな違いがあった。酸素が不足するとラッカセイの発芽率が著しく低下し、次に大豆、エンドウで低下が見られた。一方、稲、トウモロコシ、ゴマでは発芽率低下が認められず、小麦や綿も影響は小さかった。

一般にマメ科作物は酸素不足で発芽率が低下しやすく、その生育は出芽直後から劣り、生育全期間を通じて持続し、最終的には子実収量が大きく低下する。特に大豆は、マメ科作物の中でも酸素不足の影響を受けやすい部類に属する。

参考文献:有原丈二『ダイズ 安定多収の革新技術』(農山漁村文化協会)
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