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菌根菌との共生

マメ科植物は根に根粒を形成する。その中には根粒菌(バクテリア)がいて、宿主のマメ科植物から光合成産物を受け取る代わりに、窒素を還元してアンモニア態窒素に変換し、マメ科植物に供給する、いわゆる「共生的窒素固定」を行っている。

もちろん大豆も根粒(菌)を持っていることから、従来、大豆を栽培した跡地は窒素肥沃度が高まっていると考えられてきた。そのため、窒素という観点から見た場合の作付け体系は、大豆にとってよりも、大豆の後に栽培される作物にとって重要と考えられた。だが、大豆も他の作物同様に有機態の窒素などを吸収しているのであれば、大豆にとっても作付け体系は極めて重要となる。大豆のために、土壌に有機物や窒素を残してくれる作付け体系が望まれる。

ここで見逃せないのが、菌根菌(マイコライザ)との関係だ。菌根菌は植物の根に共生し、植物から栄養分をもらう代わりに、植物のリン酸や亜鉛、あるいはアンモニア吸収を助けるといわれる糸状菌で、根粒菌と並ぶ善玉菌である。

さて、なぜ作付体系が菌根菌の共生に重要なのかというと、菌根菌は植物の根でしか繁殖できない絶対寄生菌であるため、畑に菌根菌と共生しないソバ、アブラナ科類、テンサイなどや、共生程度の大きくないムギやジャガイモなどが栽培されると、その跡地では密度が低下するためである。密度が低下すると後作物との共生程度は低下してしまう。一方、菌根菌とよく共生する作物にはトウモロコシ、ヒマワリ、サツマイモなどがあり、その跡地では菌根菌密度は増加し、後作物との共生程度も高くなる。畑に作物がない場合にも、絶対寄生菌である菌の密度は低下する

米国で大豆がトウモロコシと輪作されるのは「トウモロコシの栽培跡地では大豆連作跡地よりも菌根菌との共生程度が高まって、リン酸吸収が増えるため」との報告がある。また、米国では大豆などに亜鉛欠乏が起こることが知られているが、菌根菌との共生が良くなれば、欠乏症状がなくなることも知られている。作付け体系における前作物は、菌根菌密度への影響を通じて、大豆の生育や収量に大きく影響するといえる。

参考文献:有原丈二『ダイズ 安定多収の革新技術』(農山漁村文化協会)
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