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南予地方のふくめん

高知県の有名な郷土料理「皿鉢(さわち)料理」は、大ぶりの皿や鉢に刺し身などを盛り合わせた宴席料理。全国的にも広まりつつある。冠婚葬祭など、大勢の人が集まる場所で供せられ、大きな皿に盛られたたくさんの料理を取り分けて頂く。

この高知の皿鉢料理が、同じ四国でも南予地方(愛媛県南部)では「鉢盛料理」と呼ばれている。南予地方には、宇和島市、大洲市、八幡浜市、西予市、喜多郡、北宇和郡、西宇和郡、南宇和郡が含まれる。その鉢盛料理に欠かせない一品に「ふくめん」がある。

ふくめんとは、「白、赤(ピンク)、緑、黄の彩りが美しい料理。細かく切った蒟蒻を鍋で空炒りし、醤油、ダシ、砂糖、みりんで味をつけ、大皿に盛ります。その上にたっぷりの紅白のソボロと小口に切ったねぎ、みじん切りにしたミカンの皮をきれいに敷きつめたもの。飾りだけのように考えられがちですが、あっさりめの蒟蒻と薬味による味の変化が楽しく、上品な料理」である。近年、細かく切ったこんにゃくの代わりに糸こんにゃくを使うところも増えてきたようだが、細かく切ったこんにゃくの方がおいしいという。

俗説では、薬味で下のこんにゃくが見えなくなるほど覆われることから「覆面」の名が付いたともいわれる。より信頼できる説としては、室町時代の料理書『包丁聞書』にタイやタラなどの干物をあぶってむしり、叩いて繊維を砕き、綿のようにしたものを「ふくめ」と記した例があることから、「ソボロ状のもの=ふくめ」が転訛して「ふくめん」になったというものがある。

ふくめんを含めて鉢盛料理は、もともと“ハレ”の場の食事として神に捧げる供物の役割を担っていたのだろう。ふくめんが白・赤・青(緑)・黄の4色に染め分けられることには、陰陽五行思想の影響がしのばれる。例えば、国技である相撲の土俵で、四隅の房の色は東の青龍、南の朱雀(赤)、西の白虎、北の玄武(黒)、そして中央を占める土俵が黄色を表しているが、同じ要領で類推すれば、炒りこんにゃくは黒に当たる。

参考文献:土井中照『愛媛たべものの秘密』(アトラス出版)
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