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北野恒富展

2017_07_11_北野恒富展 7月11日(火)、「あべのハルカス美術館」に
 お出掛けしました。日本一の超高層ビル
 「あべのハルカス」は、3月7日で開業3周年
 だったようですが、いまだに「ハルカス300
 (=展望台)には上がっていないなあ。その
 代わりと言っては何ですが、16Fの美術館は
 よく利用させていただきます。本当に気軽に
 足を運べる、良い美術空間です。今回は没後
 70年を記念しての「北野恒富展」でした。
        ☆
北野恒富(1880~1947)は、東京の鏑木清方、京都の上村松園と並び称される
三都の美人画家なのですが、どうも地元・大阪においてすら、その存在が今ひとつ
浸透していないようなもどかしさがあります。正直、ぼく自身の記憶だって曖昧でした
……金沢出身の恒富が、出発点として選んだのは、版下製作業者。17歳時に大阪へ
出てくると、新聞の挿絵画家となります。展覧会に出展して入賞を果たす以前に、
要はグラフィック・デザイナーとして出発していたことになります。アルチザンの技は
ポスターの原画などでありありと見せ付けられる訳ですが、半面、それ故の通俗性を
(あげつら)われることになります。その辺りが“大阪”臭いと思われる所以かと愚考
するとともに、卑俗で何が悪い!と、ぼくなどは苛立たしくもなります。しかし、恒富は
私淑していた横山大観に「色気があり過ぎて困る」と言われたせいか知りませんが、
内面表現”とやらを深化させる方向に走り、はんなりとして、纏綿たる上方情緒の
世界に達することになってしまいました。フライヤーにも使われた「涼み」、「いとさん
こいさん
」、「願いの糸」……ええ、悪くはないでしょうよ。「なにわ美人図鑑」と呼ぶ
しかない予定調和的な世界観。ですが、それはオダサク「夫婦善哉」だけの作家
と見做してしまう思考停止であり、あるいは、大谷崎『細雪』のみで評価してしまう
(鷹揚に構えたふりの)偏狭さであって、谷崎潤一郎は初期の「刺青」他の幻想文学
~探偵趣味の短編を抜きに語れないのと軌を一にして、恒富は“画壇の悪魔派”と
呼ばれ、忌避された初期の妖艶美漂う作品にこそ、有無を言わせぬ一方的な強みが
発揮されているものと断言できます。緋の着物をまとった遊女の妖しさに魅入られる
暖か」、近松門左衛門『心中天の網島』に材を取った「道行」の凄み……ぱっと一目
見て、これはあかん!と戦慄させられます。けれども、あかんからこそ良いのです。
あかんものはあかんと、ストレートにぶっ込んでくる絵力が言葉を失わせてくれますよ。
       ☆
敬愛する橋爪節也さん(大阪大学総合学術博物館前館長)や
森村泰昌先生のビデオ・コメンタリーも良かったです。
特別出品となった森村泰昌「北野恒富・考/壱」には、
不意打ちで笑かしてもらいました。ほんまに身体を張っているなぁ。
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 美術小説

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
フードビジネス・コンサルタント
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好きな言葉は「ごちそうさま」。

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