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折々の豆腐(4)

短歌に限らず、擬古文めいた文章上の修辞に対して、
割合に混乱している人も見受けられるので、一旦整理をば――。
まず、文語口語の違いは、何となくわかったことにしましょう。
(口語は理念的に現代の話し言葉、文語は定着した過去の文字表現くらいで)
表記には、歴史的仮名遣い(=旧かな)と現代仮名遣い(=新かな)があり、
小説や短歌などの文学表現において、いくつかの組み合わせが混在していると、
読者も混乱させられてしまいがちではありますが、最も自然な気がするのは
《口語+新かな》でしょうか。《文語+旧かな》はガチガチの懐古趣味のアピール
としか、現代人の目には映りません。《文語+新かな》、あるいは
《口語+旧かな》を使用すれば、短歌や俳句など、日本的な定型詩の香りが
漂ってきます。短いからよいのであって、《口語+新かな》以外の組み合わせを
小説などで濫用されると、読者をかなり限定してしまうことになりかねません。
ただ逆に、文語や旧かなを使うだけで、安易な歌人気取りを量産してしまえる
状況も、どうかと思うのですけれども。単なるムード作り、ポエジーの核も無く。
       ☆
平井弘
らつぱをふいて来るといつたところで豆腐やがもう伝はらないか
       ☆
『角川 短歌 7月号 2017』(角川文化振興財団)から豆腐詠を抽出(敬称略)。
「おまへが鴉だつたときに」と名付けられた巻頭作品31首中の一首。
どの歌も日常的な単語から成りながら、誰が誰に対して語っている言葉なのか、
明確に指示されておらず、さらに歴史的仮名遣いによって、距離感すら計れず。
上掲の一首だけ詠めば、豆腐屋のラッパという昭和ノスタルジーな歌
と見えなくもないですが、「IS」という単語も窺え、数首前の「楽隊」という語から、
進軍ラッパ”を想起させられ……そう明示されていないから、そうではない
とも言えません。読み手を宙ぶらりんに吊るし上げ、現在の不穏な時代状況を
もう一度自分の目で見つめなおすよう、潜在意識に囁きかけてくる呪文です……
豆腐屋のことを言っていたんです、迫り来る別の何かについて、警戒するように
呼びかけていた訳ではありません。ぼくも、何かを具体的に言うつもりはなくてね。
       ☆
見なされます見はられます見て見ないことにされます見ないことです
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テーマ : 短歌
ジャンル : 小説・文学

tag : 豆腐短歌

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歌わない詩人、喰えない物書き。
たまに「考える人」、歴史探偵。
フードビジネス・コンサルタント
(自称)。
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