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イソフラボンと乳がん

悪性腫瘍の「がん」が厄介なのは、大きくなって転移し、広がっていくことである。がん細胞は栄養を補給するために腫瘍血管という特別な血管を作り、それを通じて転移するので、がんを顕微鏡で診る際には、がん細胞の周りにできている腫瘍血管の様子を参考にして、悪性の度合いを判断する。腫瘍血管が張りめぐらされていると、取り除いたとしても転移している可能性が高い。大豆などマメ科植物に多く含まれるイソフラボンには腫瘍血管が新しく作られるのを抑える効果があり、そのためがん細胞が急速に増殖し転移するのを防ぐと考えられている。

大豆イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)と構造が似ていて、エストロゲン様作用はもちろんだが、エストロゲンの悪い面を防ぐ働きもある。エストロゲンは強く働き過ぎて、レセプター(受容体)に入ると乳がんを増殖させてしまうこともあるが、イソフラボンを取り入れて先にレセプターに入るようにしておくと、エストロゲンがレセプターに入ることができず、結果として乳がんが大きくなるのを防ぐことができる。エストロゲンのレセプターにイソフラボンが代わりに入ることで、エストロゲンがレセプターに入り込めなくなり、作用を発揮できなくなる(増殖できなくなる)のである。

かつて一部のマスコミが「女性ホルモンにはがんを大きくする作用もあるから、イソフラボンも取り過ぎは良くないのでは」と報じたが、食品安全委員会では「現在までに入手可能なヒト試験に基づく知見では、大豆イソフラボンの摂取が女性における乳がん発症の増加に直接関連しているとの報告はない」としている。実際、大豆イソフラボンの作用は、エストロゲンに比べて1,000分の1か、1万分の1と極めて小さく、むしろレセプターに入ることによってエストロゲンの強過ぎる作用をブロックする。漢方薬のように、女性ホルモンが不足している場合は補い、強過ぎる場合は抑えるのである。

また、ダイオキシンなどの環境ホルモン(内分泌撹乱物質)が、同じレセプターに長く居座ってがんを発生させると考えられているのと異なり、イソフラボンはレセプターに入ってもすぐに抜けて尿中に排出されるので、そういった心配もない。

参考文献:家森幸男『110歳まで生きられる!脳と心で楽しむ食生活』(日本放送出版協会)
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