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天才仏師運慶の仏像

9月19日(火)、13時半から「朝日カルチャーセンター2017_09_19_中之島フェスティバルタワー
大阪・中之島教室で開講された講座「天才仏師 運慶の
仏像
」を聴きに出掛けました。中之島教室は、「中之島
フェスティバルタワー
(=右画像)の18階に入っています。
南側壁面レリーフの制作者が、松岡阜(ゆたか)になります。
       ☆
さて、講師は京都造形芸術大学教授の金子典正氏。
今秋(9月26日~11月26日)、東京国立博物館で開催
される特別展「運慶」に合わせての講座で、特に同展に
出陳される足利市「光得寺」の大日如来坐像と、近年
発見された大日如来坐像(「真如苑」蔵)の由来に迫ります。
オープニングから、自分は運慶の専門家ではない、
中国仏教初伝期における仏教美術が専門、と断られてはいましたが、
却って、素人や一般人にも平明軽易な内容となり、好感度大でした。
       ☆
16時までの長丁場となり、間に10分の休憩を挟んでいます。
前半では、運慶(?~1223)の作例を概観していきましたが、
時代様式や個人様式の変遷の中で捉えていくことがポイントです。
いくつか、はっとさせられた指摘として、例えば、定朝(?~1057)の
寄木造技法の完成によって、仏像の内部空間の意識が増したという点。
以後は、見えないからとぞんざいに処理するのでなく、金箔仕上げにしたり、
舎利やら何やら、様々な物が仕組まれたりするようになる訳です。
       ☆
他に、旧来の脱活乾漆造が盛って(プラスして)リアルな表現を図るのに
対して、木彫像の写実表現は削って造るため、ベクトルが逆だとの指摘に
なるほど、と。また、「願成就院」(静岡・伊豆の国市)の阿弥陀如来坐像、
浄楽寺」(神奈川・横須賀市)の阿弥陀三尊像などが運慶の真作である
ことをもって、彼が下向したとされてきたのですが、旧説を覆す史実が
発見される展開は、上質のミステリー(=アリバイ物)を読んでいるように興奮。
平重衡による南都焼き討ち(1180)以前から、慶派と鎌倉幕府筋の
結び付きがあった――運慶の父、康慶の「瑞林寺」地蔵菩薩像の制作が
治承元年(1177)。同像の銘文に東国の有力武士の名が見える――
ことにも、一々唸らされました。知識には絶えざるブラッシュ・アップが必要。
       ☆
後半は、山本勉氏の日本仏像史をなぞるような形になりますが、
栃木県足利市内の「鑁阿寺(ばんなじ)」に伝わる「鑁阿寺樺崎縁起
幷仏事次第」
の文中に現れる2体の大日如来坐像は、同市に在った
樺崎寺」の下御堂赤御堂に祀られた2体の大日如来坐像を指しまして、
樺崎寺は、鎌倉時代前期の武将、足利義兼(1154~1199)の創建。
樺崎寺に設けられた義兼の廟所が“赤御堂”。「光得寺」の大日如来坐像は
義兼が背負って運んだといわれる厨子入りでもあることから、赤御堂の像だろう
と考えられ、下御堂(=法界寺)のもう1体が「真如苑」に十数億円で落札され、
海外流出を免れた像と推定されています。体内には五輪塔形木札、同形舎利容器、
水晶珠が仕込まれている模様。ところで、義兼は単に源氏に属するだけでなく、
母が熱田大宮司藤原季範の娘でもあり、妻は北条政子の妹でもありました。
身内に「瀧山寺」僧が多々いますし、「願成就院」は北条氏の氏寺ですから、
運慶との縁は強固と思われ、造像とあれば、当然の如く運慶に依頼したでしょう。
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テーマ : 仏教・佛教
ジャンル : 学問・文化・芸術

tag : 講座仏像美術

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講座終了後

講座を終えると、金子教授とお話。
本当に仏像が好きなんだなぁ、と
うれしくなって、お互いに、
どこそこの仏像が……と
話し込んでしまいましたよぉ。

追加訂正

「中之島フェスティバルタワー」の南側
壁面のレリーフの名称を誤っていました。
「壁面女人像」は屋内に在りまして、
レリーフは「牧神、音楽を楽しむの図」が
正しいようです。松岡阜も制作に関わっていますが、
弟子筋の中島快彦が原案、建畠覚造が設計を手掛けた模様。
※過去記事(2017-06-26)と併せて訂正いたします。
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